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武装神姫達のソード・ワールド2.0【第2-2話】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm19081331 クーガのステータス 魔物データ/クーガ なお、本来なら『骨組みだけの試作品で、稼働していることは稀』という設定。 なのだが、メカニックな雑魚敵として手頃なデータではある。 グルガーンのステータス 魔物データ/グルガーン
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2012/6/09 いまだにこんな辺境の地を見ていただいてるかはわかりませんが、移転予定。 ブログではなくて、HPをきちんと立てる予定。予定は未定といいますので、また長期失踪もありないこともない。 2012/5/23 ああ、顔のモデリングが・・・目が・・・口が・・・ 2012/05/13 武装完成。ゼビュロスが超絶怪しい 2012/05/12 ともあれ一応の完成。あとはテクスチャーはって微調整かなぁ http //www.nicovideo.jp/watch/sm17800077 【ニコニコ動画】【MMD】先生に踊ってもらいました【テスト】 2012/05/10 後ろからの資料が少なすぎた! 1360 768 2012/05/09 一日作業でエウクランテ装備。 ヘッドパーツは自信ないから予定はなし。 ↓ニコニコ静画でアップ http //seiga.nicovideo.jp/seiga/im2038199 2012/05/08 MMDモデルでも作っていきましょうか ※タイムスリップしとるがな。2011→2012表記替え 2011/10/26 もう何日もしないうちに終わってしまうんだなぁと。 2011/8/27 バトロン・ジオスタサービス延長だとな。 あれだけ何の音さたもなかったというのに今更っていう! 課金もできないし、特にやることは見つからないけれど MMD用の資料集めでもやりますかな 2011/8/25 ホワイトグリン子さんなるものを見つけてえらく気に入ったので MMDの操作方法に悪戦苦闘しながらようやく3秒分の動画になったので ニコニコ動画に上げてみました。 ↓ http //www.nicovideo.jp/watch/sm15423945 いやしかし、画質が悪すぎる 2011/8/23 時間がないので、ちまちま二次小説を一から手直し中。 プロットもなにもなしで思いつくままに書いてるためにこの先の展開どうするのよと 自分ながら思ってしまう。 2011/8/22 MMD導入してみました。 神姫のモデルデータを作成していこうかなって思いつつも、そんな時間もないのがやきもき。 2011/7/24 色々と8月は忙しくなる見通しから公式掲示板への投稿を終りにします。 本当なら、明言せずともひっそり消える予定でしたが なんの予告もないアイテムショップのセールとその価格に呆れてしまったのがキッカケでしょうか。 0円セールにしろよなんていうわけではなく、やるならやるで告知があれば 最後に課金して、あれやこれや一杯使ったSSつくってみたいとか思ってたのですが そんな事もさせてもらえませんか、そうですか。みたいな! 2011/5/31 バトロン・ジオスタ共にサービス終了とのことで。 3年前にニコニコで武装神姫の広告からやってきた自分が最初に購入したのがエウクランテ。最後に買ったのが天使型悪魔型Mk2になりますが、その間にたくさんの神姫と遊んだものです。 環境からフィギュアなどの実物に手が出せない自分にとってジオラマスタジオと武装神姫はほとんど同じものでした。 それが3ヶ月後に無くなってしまうと思うとさみしい気持ちでいっぱいです。 ここもほとんど更新もなかったですが、見ていてくださった方にはどれだけ感謝の言葉を著しても、すべて伝わらないのも寂しいものです。 残りの3ヶ月で出来る限りのSSを撮って、コナミにはこういう商品がほしいなっと送るメールの内容を考えていきます。 « » var ppvArray_0_ff60befc58931aef83105dfcea331d86 = new Array(); ppvArray_0_ff60befc58931aef83105dfcea331d86[0] = http //w.atwiki.jp/guringurin/?cmd=upload&act=open&page=%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8&file=20111025_001.jpg ; ppvArray_0_ff60befc58931aef83105dfcea331d86[1] = http //w.atwiki.jp/guringurin/?cmd=upload&act=open&page=%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8&file=20110724_001.jpg ; ppvArray_0_ff60befc58931aef83105dfcea331d86[2] = http //w.atwiki.jp/guringurin/?cmd=upload&act=open&page=%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8&file=20100809_011.jpg ; ppvArray_0_ff60befc58931aef83105dfcea331d86[3] = http //w.atwiki.jp/guringurin/?cmd=upload&act=open&page=%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8&file=20110319_035.jpg ; ppvArray_0_ff60befc58931aef83105dfcea331d86[4] = http //w.atwiki.jp/guringurin/?cmd=upload&act=open&page=%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8&file=20100810_060.jpg ; ppvArray_0_ff60befc58931aef83105dfcea331d86[5] = http //w.atwiki.jp/guringurin/?cmd=upload&act=open&page=%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8&file=20100810_014.jpg ; 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elements.push(element); } return elements; } 【since 2008/12/10】 このページ内における神姫NETから転載された全てのコンテンツの著作権につきましては、制作及び運営元である株式会社コナミデジタルエンタテインメントに帰属します。 ©2009 Konami Digital Entertainment なお当ページに掲載しているコンテンツの再利用(再転載・再配布など)は禁止しています。 当サイトでは、フィギュアなどの実物ではなく、神姫NETで配布している、「武装神姫ジオラマスタジオ」及び「同バトルロンド」コンテンツを中心とした内容であります。 更新速度はとてつもなくマイペースです。 また、ページによっては画像を多量に含むものがあります。(管理人の知識が許す限りの努力をもって見やすいようにはしております。)
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夢現で思うのは幼馴染の少年の事。 何故だろうか、食い違ってしまったのは。 (こんな筈じゃ無かったのにな) 多分、“私”はあの悪魔と契約をしたのだ。 覚めて行くまどろみの中で飛鳥はそう思う。 バッテリーの充填率は3割。 充分だ。 飛鳥の巡航速度は人が走るより速い。 今から出てもまだ間に合う。 まだ、北斗を守れる。 「きっとその為に、私が此処に居るんだ」 本来ならばバッテリーのチャージが終わるまで、決して起きるはずの無い武装神姫が目を覚ます。 それは別段超常的な事ではなく、万に一で起こりうるただのバグ。 ただ、それがココで起きた事はほんの微かな奇跡。 飛鳥は未修復の千切れた右腕を押さえながら、夜の空に翼を広げる。 「行かなくちゃ!!」 私が待ってる。 アスカ・シンカロン12 ~賑禍~ 「……はぁはぁ、間に合ったぜ」 家から走って校門を乗り越え、窓を割って校舎の中へ。 そして屋上まで階段を駆け上り、ジャスト15分。 「……やっぱり来てくれた。北斗ちゃんは私の事が大切なんだよね?」 北斗ちゃん。 その呼び方は……。 「……お前、やっぱり明日香なのか……?」 「どっちだったら良かったの?」 「え?」 「北斗は、夜宵ちゃんと明日香。どっちが良かったの……?」 「それは……」 「私は。どっちになればいいの……?」 「お前、何言ってるんだ!! そんなの、元もままで良いに決まってるだろ!!」 「……」 「だ、そうですヨ」 明日香か夜宵かも定かではない少女の背後から、白い悪魔型が姿を見せる。 「やはり、貴女達は同じでなければ受け入れられなイ」 「……テメェ」 「さあ、考えましょウ。二人が同じになる方法ヲ。……そうでないト。……彼に受け入れてもらえなイ」 「テメェが元凶か!!」 「まさカ。私はただ提案しただけでス。同じだからいけないのかも知れないッテ」 違えば。 何かが変わるのだと。 「そしテ、それが誤りだったのではないカ、と。提案しているだけですヨ?」 それを実行に移したのはカノジョ。 実行に移させたのは。 「他ならヌ、貴方でス。神凪北斗」 「テメェをぶっ壊す!!」 「どうぞご自由ニ。でも良いんですカ? 私にかまけているト―――」 「…………」 屋上のフェンスを、少女は昇り始める。 「……っ」 どちらの名前を呼べば良いのか。 その間に白い悪魔型が迫る。 「如何しましタ? ワタシを壊すならお早めニ。……でないト、でないト。……カノジョ死んでしまいますヨ?」 「……クッ!!」 フェンスはそれほど高くない。 あっという間に彼女の手がその縁に掛かる。 「待て!!」 駆け寄ろうとする北斗の眼前に踊り出る白い悪魔。 その爪が正確に北斗の眼を狙う。 「……チッ!!」 腕で叩くが、さほどのダメージでもないらしく、すぐに次が来る。 「邪魔するな!!」 彼女の片足がフェンスを越えた。 白影は正確に眼を狙ってくる。 払っていては、間に合わない。 「……!!」 覚悟を決めた。 目の一つ二つ奪われても、彼女の所まで辿り着く。 それが先だ。 「無駄でス。彼女は死ニ、貴方も死ヌ。ソレがワタシの食事なのですかラ。邪魔をしないで下さイ!!」 視界に飛び込んでくる爪が迫る。 だが、足は止めない。 払う暇も無い。 彼女は既に重心をフェンスの向こうに。 「 ーーーッ!!」 自分で。 どちらの名前を呼んだのか。 神凪北斗には自覚が無かった。 爪が。 フェンスを。 迫る。 乗り越えて。 突き刺さる。 落ちる。 ―――直前。 「北斗!!」 「―――っく!!」 「!?」 “吹き飛んだ”悪魔型の横を抜け、フェンスに駆け上がった北斗の手は確かに落ちる少女の腕を掴んでいた。 -
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剣と剣がぶつかり合う音が、廃墟に響き渡る。 片刃の長剣、エアロヴァジュラでと長槍の破邪顕正をはじきあげ、HMT型イーダ・ストラダーレ――個体名ヒルデガルドは距離をとった。 対する侍型紅緒――個体名藤代は地面を蹴り、こちらに一気に距離を詰め、長槍を突き出してくる。体勢を立て直す暇を与えないつもりのようだ。 『エアロチャクラムで受け流せ』 「はいですわ!」 マスターからの指示を受け、ヒルデガルドは左側のエアロチャクラムを瞬時に操作する。 パンチを打つように突き出したエアロチャクラムの表面装甲を破邪顕正が薄く削りながら流れていった。 ――西暦2036年。 第三次世界大戦もなく、宇宙人の襲来もなかった、現在からつながる当たり前の未来。 その世界ではロボットが日常的に存在し、様々な場面で活躍していた。 「そこっ!」 藤代の体勢が流れたところで、エアロヴァジュラを一閃。しかし、右肩の鎧部分を斬り飛ばすだけに終わる。――藤代がとっさに槍の石突をつかってこちらをヒルデガルドを殴りつけたからだ。 「うっ!」 「危ない危ない。だが、勝負はこれからだ!」 藤代は再び距離を詰めてくる。武装は破邪顕正から為虎添翼と怨鉄骨髄へと変わっていた。手数を重視し、こちらを押しこむ腹のようだ。 「そらそらそら!」 「くううっ!」 ヒルデガルドはエアロヴァジュラを一度放棄。エアロチャクラムを両手で操り藤代の連撃を捌いていくが、鋭い刃を持つ二振りの小太刀は容赦なく装甲を削り取っていく。 ――神姫、そしてそれは、全高15cmのフィギュアロボである。“心と感情”を持ち、最も人々の近くにいる存在。 多様な道具・機構を換装し、オーナーを補佐するパートナー。 その神姫に人々は思い思いの武器・装甲を装備させ、戦わせた。名誉のために、強さの証明のために、あるいはただ勝利のために。 「どうしたどうした! 懐に入り込まれては手も足も出ないか!?」 「……っ、うるさいですわ! えいっ!」 轟、という音を従えてヒルデガルドはエアロチャクラムを振りぬく。しかし、藤代は半身になってそれを受け流すと、為虎添翼を下から振りぬいた。 懐深くに入りこまれたせいか、ヒルデガルドは咄嗟に体をそらしたが、為虎添翼の剣先がヒルデガルドの頭部に装着されていたルナピエナガレットを叩き割る。 「あっ……」 そのまま体勢を崩し、倒れるヒルデガルド。藤代は勝利を確信した。 「これで終わりだっ――首級、頂戴!」 仰向けに倒れたヒルデガルドに、藤代は逆手に握った怨鉄骨髄を振り下ろした。 オーナーに従い、武装し戦いに赴く彼女らを、人は『武装神姫』と呼ぶ――。 第一部 ヴァイザード・リリィ 渾身の力で振り下ろされた怨鉄骨髄は横方向の衝撃に弾かれ、廃墟の壁に突き立った。 ヒルデガルドがエアロチャクラムを倒れた状態から振りまわし、怨鉄骨髄を叩いたのだ。そのままその勢いを利用してヒルデガルドは体勢を整える。 「っ……。必殺のタイミングと思ったのだがな」 悔しそうに、しかし嬉しそうに笑う藤代。 「まあいい。まだまだ楽しめるのは私にとって嬉しいことだ……。久々の強敵だ。こう早く終わっては困る」 「……くふふっ」 ヒルデガルドも笑う。 「なるほど、貴女も楽しいか。そうだろう! 我らは武装神姫。戦うために生まれた存在だ!」 「……くふふっ。もちろん楽しいですわ」 ゆっくりとヒルデガルドは立ち上がる。そして、まだ顔に引っかかっていたルナピエナガレットを素手で掴み―― 「ですが、ワタクシは戦うことが好きなのではありませんの――」 ――握砕した。粉々になったバイザーは0と1に分解され、データの海に消えていく。 露わになった紫水晶色の目が恍惚の表情に眇められる。 「――勝つことが好き。勝つことが楽しいのですわ」 「……愚かな。結果のみ求める者に碌な者はおらんぞ?」 「かまいませんわ。――もっとも、『彼女』は戦うこと自体あまり得意ではありませんが、ワタクシは違いますわ。全力でお相手いたしますわ、お武家様」 瞬間、地を蹴る。二体の神姫の距離があっという間に零になる。 「!!」 あまりのスピードに藤代は対処が遅れた。 ハイマニューバトライク型であるイーダ型は機動力には確かに定評があるが、ここまでの瞬発力は藤代にとっては前代未聞だった。 藤代はとっさに為虎添翼を眼前に立てる。 刃がかみ合う硬質音。エアロヴァジュラと為虎添翼がぶつかり合った音だ。 「……ここまでの瞬発力を出せるとは。ようやく本気になったということか?」 「本気? ……そうですわね。勝つためにワタクシはおりますの。ゆえにワタクシは常に本気ですわ」 ――エアロチャクラムがノーモーションで振られる。身を引くことが敵わず、藤代は宙を舞った。 「がっ!?」 バーチャルの空を高く舞い上がり、背中から地面に叩きつけられる。 「ぐ……くそっ」 起き上がろうとする藤代。しかしそれは直後に上から飛びかかってきたヒルデガルドに押さえられた。 「ぐっ!」 エアロチャクラムで両手首を掴まれ、地面に押さえつけられる。ヒルデガルドはエアロヴァジュラを逆手に握り、藤代の喉に突きつけていた。 「……どうした? 獲物の前で舌なめずりとは。さっさと首を切るといい」 「……くふ、くふふっ。負けが決まっても、強気な御方……。ますます気に入りましたわ」 ヒルデガルドはそう言うとエアロヴァジュラを藤代の首筋のすぐ横に突きたてたそして―― 「!?」 「いつまでそんな強気でいられるか――試させていただきますわ?」 「――っ! むぐっ!?」 ――藤代の唇を、自身のそれで塞いだ。 たっぷり十秒近く口づけを交わした後、ヒルデガルドは顔を離す。 藤代はあまりの出来事に声が出ない。 「な!? な、何――」 「貴女はワタクシの獲物――。ならば、ワタクシがどう料理しようと、ワタクシの勝手でしょう? 御安心なさいな、美味しく食べて差し上げますわ」 ヒルデガルドの右袖飾りが展開し、中の機構をむき出しにする。その起動を確認した後、ヒルデガルドは右手で藤代の身体をまさぐりはじめた。 「きっ貴様っ! 自分が何をっやっているのかっ……くぅっ、わかっているのか!?」 「勿論ですわ。さあ、早く貴女の声をお聞かせくださいな――」 「や、やめ――ひぅっ!? ふぁっ! やぁっ!?」 突如として始まった羞恥劇に、藤代はエアロチャクラムを振りほどこうともがくが、ヒルデガルドが藤代に触れるたび、藤代から力が抜けていく。 外では彼女たちのマスターが何か騒いでいたが、ヒルデガルドにとってはそれは些末事以下であった。 「くふ、くふふっ。くふふふふっ……」 「い、嫌だっ! 嫌だ! やめろ、やめろっ! やめっ、おねがい、やめてぇっ……」 藤代の願いむなしく、ヒルデガルドの指は彼女の身体の隅々までを舐めつくし、凌辱する。 そして、それが秘部に到達しようとしたときだった。 ビーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ! ――Surrender A side. Winner Hildegard. 藤代側のサレンダー。ジャッジの審判が下ると同時に、藤代の身体は0と1へと変換され、バーチャルの空へと還っていく。 それを見送り、ヒルデガルドは先ほどまで藤代を嬲っていた右手を舐めて、呟いた。 「もう、あと少しの所でしたのに――無粋な殿方ですこと」 ◆◇◆ ――「また」やった……。 俺――如月幸人は筐体の前で頭を抱えた。 周囲で観戦していた他の神姫やそのマスター達はこちらをみて苦笑ともとれないような微妙な表情をしている。 その顔は全て「相手も可哀そうに――運が悪かったなあ」と語っていた。 筐体の向こう側では、紅緒型の神姫――確か藤代、といったか――のマスターが泣き崩れる彼女を必死に慰めていた。 「主っ……主ぃっ……。私、汚れてしまいました……。この身を全て主に捧げ、永久の忠誠を誓ったのに……」 「藤代っ!? 藤代! 大丈夫だ! あれは全てバーチャル空間での出来事だ! お前の身体には一片の汚れもない! あとその言い方は俺に激しい誤解が生まれるからやめてね!」 「あのイーダ型に触れられた感触が、今でも……。こんな汚れた身体では、もう主にお仕えすること叶いません。主、貴方を残して先に逝く私をお許しください――」 「藤代――ッ!?」 ……なんだかすごいことになってる。 こちらが指示したことではないと言え――ひっじょーに申し訳なくなってくるが、やっぱり謝るべきだよなあ……。 ――こちら側のインサートポッドが開き、中から相棒――ハイマニューバトライク、イーダ・ストラダーレ型「ヒルデガルド」が姿を見せる。 バーチャル空間で壊されたルナピエナガレットは何事もなかったかのように彼女の顔面を覆っていた。 俺とヒルダとの目が合う――正確にはバイザー越しにだが――。ヒルダは筐体の向こう側の惨状を見やり、俺を見やり、もう一度向こう側の惨状を見て、呟いた。 「……マスター。私、また――」 「――そう。『また』、やった」 それを聞くや否や、ヒルダは脱兎のごとく駈け出した。 全長五メートルほどの筐体の上を全力疾走して向こう側にたどり着くと、その勢いそのまま―― 「――申し訳ありませんでしたわっ!」 ――スライディング土下座をした。 一瞬の事に、藤代も、彼女もマスターもぽかんとしている。 「私、貴女にとんでもないことを……。本っ当に申し訳ありませんでしたわ!」 「え、あの、いや……」 藤代はマスターの後ろに隠れておびえている。一方のマスターはバーチャル空間でのヒルダと、今目の前で土下座をしているイーダ・ストラダーレのギャップに追いつけず、目を白黒させていた。 そしてその流れでこちらを見られても、俺も困るのだが。 「あー、えっと、どうもうちのヒルダがご迷惑をおかけしました……」 俺も頭を下げる。神姫の不出来はマスターのそれだ。 それに言っちゃああれだが――ヒルダの巻き起こす騒動に頭を下げるのも、ここ一カ月で慣れた。悲しいことだが。 「あの、いや、その……どういうこと?」 藤代のマスターは周囲のギャラリーに説明を求めた。観客たちは苦笑して互いに顔を見合わせるだけである。 「まあ、挑んだ相手が悪かったよな」 「正直、こうなる予感はしてたもんね」 「ヴァイザードの仮面をはがすなってのは、なんつーか、もうここの常識だよな」 口々に言い合うギャラリーの言葉を聞き、藤代のマスターの頭にさらに疑問符が浮かぶ。 極めつけは、ヒルダの放った一言だった。 「……責任を取れ、とおっしゃるのであれば、従いますわ。藤代様。私のこと、どうかお好きなように――」 「ひっ――!」 それを聞いた瞬間、藤代はガタガタと震えだした。 先ほどの恐怖がよみがえったのか、それとも先ほどとはまったく違うヒルダの性格のギャップに恐怖を覚えたのか。 藤代はマスターの手から飛び降り、ゲーセンの入口へと逃げだした。 「うわああああああああん!」 「ま、待て! 待つんだ! 藤代――!」 当然、それを追いかけて彼女のマスターもいなくなる。 残ったのは三つ指ついて土下座していたヒルダと、天井を仰いでため息をつく俺。そして、それを見守るギャラリー達だけだった。 「……ヒルダ、戻ってこい」 「……はいですわ」 しょんぼりと肩を落としてすごすごとヒルダは戻ってくる。足元にたどり着いた彼女を拾い上げ、胸ポケットに仕舞うと俺は荷物を手に取った。 「……どうして、私はこうなんでしょうか」 「……俺に聞かれてもなあ……」 「今の私、普通ですわよね? なのに、外れてしまうとどうしてああなってしまうんでしょう」 「…………俺に聞かれてもなあ…………」 そんなすでに二十以上は繰り返した問答を今日も繰り返しながら、近くのファストフード店で待っているであろう連れと合流すべく、俺たちもゲーセンを後にする。 ――俺の神姫は、バイザーを外すと性格が豹変する、世にも珍しい二重人格の神姫だった。 ◆◇◆ 次へ トップへ
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凪さん家の弁慶ちゃん 「まずいわね…」 ここは私立黒葉学園、高等部校舎の三階、階段踊り場。 「…何が…?」 壁にもたれかかっている男が聞き返す。 「まずいじゃないの」 踊り場の窓から外を見ながら答える女。 「だから何が…」 再び聞き返す男。その肩には小さな少女が佇んでいる。 「何がって決まっているでしょ?」 若干焦っているような声色で答える女。その肩にも小さな少女。 「…わかりやすく言え…」 呆れたように訊く男。 「まずいわ…即戦力が必要よ…」 腕を組みながら考え込む女。 「なんの…?」 明後日の方向を見つつ訊く男。 「はぁ~。あのねぇ?それはもちろん…」 女はやれやれといった表情で言い放つ… 「この私立黒葉学園神姫部のよ!!」 第一話【求む!君の力!】 静まり返る踊り場。 「…まぁ、まだ「部」じゃないけどな…」 「う、うるさいわね!」 「むしろ同好会なのかすら怪しい」 「うるさいってば…!」 「まぁまぁマスター」 と、今まで黙っていた小さな少女。女の肩に乗っていた一人が口を開いた。 「何よアーサーまで~」 「いえ、反論しているわけではないですよ?」 「まぁ、それはわかってるわよ…」 「…同好会の申請をしてから一ヶ月以内に五人集まらなければ解散…か…」 男が呟く。 「そうよ。で今四人揃っているわ!」 「でも必要人数は五人…期限は明日まで」 今まで黙っていた男の肩に乗っていた小さな少女がぼそりと言う。 「もう誰でも良いから数合わせに入れたら良い…」 「それじゃ駄目よ!欲しいのは即戦力よ!クラスはセカンド!もしくはそれに準ずるポイント獲得者よ!」 「高校でセカンドなんて中々いないだろうに…」 「そうよ!だからサードの上の上でも良いって言ってるじゃない!」 「ほとんど同じだろ…」 「うるさいわね~今集まったメンバーを見なさいよ! 四人中私とあんたとあいつがセカンド、あいつの妹がサードの上位! ここまでこだわって集めたんだから、いま諦めたら後悔後の祭りじゃない!!」 「だから人が集まらないんだろ?」 「ぐ…」 「…とりあえず…それはいいから神姫センターに行ってポイント稼ぎでもしよう…」 「と、とりあえずとは何よ!」 「それに…」 「…?何よ」 「今からなら学校帰りの奴らが参戦しているかもしれないだろ…」 「…あ、なるほど…よ~し!絶対スカウトしてやる!!」 「はぁ…」 男はため息をついた。どうしたものやら…と。 「いけ!弁慶!!」 「…うん」 広大なバトルフィールド。 荒野を駆ける神姫が一体。 対するは地上を滑るように飛行する神姫。 弁慶と呼ばれた神姫は大地を蹴り、一気に跳躍する。 その右手には巨大な塊。それは【セブン】と呼ばれていた。 【セブン】とはその名の如く、七つの装備が合わさった弁慶が使用するカスタム武装である。 この【セブン】はAM社のパイルバンカーをベースに様々な武装で構成されている。 その装備は一番から 1.パイルバンカー 2.キャノン砲 3.ガトリング砲 4.2連装ビームバスター 5.ミサイルランチャー 6.手榴弾ポッド 7.光の翼 で構成され、状況に合わせて武装を選択、もしくは組み合わせることによって数々の戦局に対応可能にした万能装備である。 しかしその装備重量は通常の武装神姫用装備と比べ、はるかに重く、普通に使用するだけでも多大な苦労を有する。 だが、そんな武装をぱっと見軽々と扱っていられるのは七番目の武装【光の翼】という補助推進システムのお陰である。 逆にこれが機能しなかった場合は単なるカウンターウエイトにしかならないであろう。 地上を駆ける弁慶も、この【光の翼】をたくみに使用して【セブン】を制御している。 これの使い方を理解していない普通の神姫にとっては【光の翼】を使用してもこの巨大な代物を制御するのでやっとで、満足に扱う事はできないだろう。 この【セブン】を満足に扱えるのはマスターの凪千空と共に設計した凪千空の武装神姫、犬型ハウリンがベースの弁慶のみ。 そういう意味では単純に使うだけ、持つだけならなら誰でも出来るこの【セブン】も事実上は弁慶専用の装備と言えるだろう。 そんな弁慶は今日、後一勝でセカンド昇格をかけた試合に赴いていた。 「飛んで!弁慶!」 「…うん」 相手の大型ビームをジャンプで回避、セブンに装備された光の翼を使用して空に浮いた状態から横へ移動。 さっきまでいた場所はビームによって焼かれていた。 「今日は絶対勝つんだから!」 「…うん…!」 「三番で牽制、五番で包囲、七番使用で接近して一番!」 「…わかった…!」 弁慶は相手に対し三番のガトリングを乱射。命中が目的ではないので標準は適当。 「…いけ…」 発射されるミサイル群。しかし相手の移動速度は凄まじい。 「速いなぁ…」 「ミサイル追いつかない…どうする…?」 「ん…よぅし、ミサイルに気をとられているうちに七番で最大加速しよう!そして一番!」 「…言うと思った」 「えへ」 「…ふふ」 やっぱり弁慶は凄いなぁ。言ってる途中から言おうとした行動を実行してる。 「…突撃…!」 広がる翼、その瞬間弁慶の姿が霞んで消える。 狙うは相手の神姫。マオチャオに大型のブースターを多数装備して機動力を向上させているみたい。 「…はぁぁぁ…!」 弁慶が一番、パイルバンカーを突き出す体制に移行する。 「いっけぇぇぇぇぇぇ!!」 相手の斜め後方から一気に突貫する弁慶。でも 「あまいの!」 「…!」 相手マオチャオが急激に方向転換。 ぐるりと一回りしたのち、背部ブースターがその回転によって質量攻撃となり、偶然なのか狙ってなのか…接近しすぎた弁慶に打ち付けられる。 「…くぅ…!」 ドガァァァァァン!! セブンで何とか防御するもはるか遠くへと吹っ飛ばされる弁慶。 そのまま盛り上がった岩の壁に激突する。 「大丈夫!?」 僕は思わず叫ぶ。 「…痛い…でも平気」 岩の瓦礫の中から立ち上がる弁慶。 「注意して!」 次が来るかも!! 「…もうしてるよ」 光の翼を再び展開させて飛び上がる弁慶。 「…どこ…?」 「いない…?」 上空から索敵する。もちろん的にならないように小刻みに軌道を変えて。 「ここだよ!」 「…!」 いきなり下から声。 「弁慶!」 「…わ…!」 下方からのクローアッパーが弁慶を襲う。 弁慶はそれを何とか回避、でも 「ぐぅ…!?」 あるはずのない背中からの衝撃。その衝撃で地面に落下、そのまま激突する。 「な、なに…?」 よろりと立ち上がる弁慶。 「弁慶!右!いや左…え、えぇぇぇぇ!?」 「千空?なに??…え…何だこれ…」 僕達は驚くしかなかった。だって… 「ねぇ、なんかマオチャオがいっぱいいるように見えるんだけど…」 「うん…そう見える…」 弁慶の周囲にはブースターを排除した相手マオチャオがいた。 いっぱい…。 「「??????」」 「いくの!」 と相手マオチャオがう動きを見せる。時には一人、時には二人、三人四人と増えたり減ったり。弁慶の周囲をめまぐるしく動いている。 「え…。うあ…!」 正面からの爪が弁慶にヒットする。次は右、後ろ、左と思わせてまた前…四方八方からの攻撃を受ける弁慶。この状況じゃセブンは盾にしかならない。 「ぐ、あ、わにゃ、くぅ…」 「え、~と…!?」 焦る僕。ええと、こんなの初めてなんだけど~!! 「落ち着け千空…まだ大丈夫…」 「…弁慶…。良ぉし!!七番最大!あれ使っちゃうよ!!」 「…わかった…!」 光の翼を限界起動させる。紅く輝く翼が弁慶を包む。 「にゃ!?」 一瞬ひるむマオチャオ。 「今だ!弁慶ぇ!!」 「…うん…!!」 一気に飛び上がる弁慶。その高度はステージの上昇限界まで達している。 そして今度は一気に急降下。内臓火器を一斉発射して周囲を爆撃。 ガトリングが鋼鉄の雨となり、ミサイルの渦が嵐を呼ぶ。その雲の合間から煌くビームランチャーの光と流星の如く降り注ぐキャノン砲の追撃。おまけに手榴弾ポッドの隕石がマオチャオがいた周囲に降り注ぐ。 これらは当たらなくても良い。当てるのは一つだけで良い! 「わ、わわわぁぁぁ~!!」 いきなりの災厄に驚くマオチャオ。 響く爆音。その時、何の影響かはわからないけれどたくさんいたマオチャオが消えて、一人になった。 「…ラッキー!見えたよ…!」 「…そこ!!」 「え、うそぉ!?」 「いっけぇぇぇぇぇぇ!!」 後は突撃あるのみ!持ち方を変えてパイルバンカーを準備! 僕と弁慶の二人の声が合わさってその名を叫ぶ。 「「七つの混沌(セブン・オブ・カオス)!!」」 ドッゴォォォォォォォン!! パイルバンカーの射突音がステージ内に響く。 「やった…??」 バチバチ… 「……く…」 弁慶の苦い声。 「浅い…の!」 とたんマオチャオの声が響き閃光が走る。それと共に辺りを覆っていた硝煙が吹き飛んだ。 「ねここぉぉ!フィンガー!!!」 「…ぐ、あぁぁ…」 弁慶の苦しそうな声がインカムに響く。 「弁慶!」 弁慶を包む凄まじいスパーク。その出所であるクローは弁慶の腹部に突き刺さり、その体を貫いていた。 「すぱぁく、えんどぉぉぉぉぉぉ!!!」 「くぅ…!!」 一気に閃光が強くなり弁慶が黄色い光に包まれる。 「弁慶!!」 光がやむ。その体から爪が引き抜かれ、ドサリと崩れる弁慶。 「弁慶!!弁慶!!」 「やったの!…え」 勝利を確信するマオチャオこと、対戦相手のねここちゃん。でもその表情が変わる。 「…ぐ…ぅ」 ぐらりと立ち上がる弁慶。セブンを支えにしてキッとねここちゃんを睨む。 さすがに驚いた。 「べ、弁慶…?」 「…はぁ…はぁ…」 ずりずりと体を引きずりながらもなおねここちゃんに接近する弁慶。 「だ、駄目だよ!動いちゃ!」 思わず気遣うねここ。 「…うるさい…まだ負けてない…」 「弁慶!もう良いよ!ねここちゃんの言う通りだよ!」 「…千空…勝つって言った…だから嫌だ…」 「はぁぁあぁぁ~!」 セブンを大きく振りかぶる弁慶。 あまりの威圧にねここちゃんの動きが固まる。 「サド…ン…インパクト…!!」 ドッカァァァァンン!! 響く炸裂音。その鉄槌は当初狙っていたであろう腹部から大きく外れ、ねここちゃんの左肩を掠っただけだった。 それが最後の力だったのかよろけて倒れこむ弁慶。 その瞬間 『試合終了。Winner,ねここ』 ジャッジAIの機械音声が合図を告げた。 「弁慶…」 「…」 マシン内でうなだれる弁慶。 「弁慶?」 「…ごめん…負けた…強かった…」 「うん、強かった。でも弁慶も良くやったってば」 「でもセカンド上がれない…」 「そうだね…セカンド昇格はねここちゃんだね…さすがって感じ」 「…ごめん…駄目な奴で」 「そんな事無いよ!」 「千空…」 「追いついて勝てば良いんだよ!ほら、前負けてから五連勝だよ?だから次は六連勝だって!」 「千空…うん…今度は負けない…あ…」 「ん?」 「駄目だ…」 「え?」 「セブンが…」 「…!」 あらら、完全にショートしてる…。セブンは戦闘システム直結型だから…内部ダメージが限界を超えたかぁ…それとも無茶な強化が祟って寿命がきたかな…。 「ごめん…」 「いいって、また二人で作ろう?」 「千空…」 「もっと強いの作っちゃおう!!」 「…うん…うん!!」 「じゃ、早速帰って製作開始だよ!」 「うん!!」 「どう?」 ねここ対弁慶。その試合映像を見ていた女が聞く。 「良いんじゃないか?」 男が答える。 「そうよね!!間違いないわ!!」 女は意気込んだ。 「さぁ、どうしよっか?」 「…うぅ~ん」 僕達はセブンについてあれやこれやと考えながら帰路につこうとしていた。 そんなセンターの入り口に人影。 「ちょいとそこの君君!!」 「?」 振り向くと女の人と男の人。あ、制服がうちと一緒だ…て事は黒葉学園の生徒? 「そう!君!!」 女の人が僕を指差す。 「その制服は黒葉学園の制服!つまりは生徒!そして神姫所持者でランクはサード上位!!」 「へ、あ、はい…」 僕と弁慶はきょとんとしていた。 「求む!君の力!!黒葉学園神姫部に来なさい!!」 「え、えぇぇぇぇぇぇ~????」 いきなり出てきてこの人は何なんだろう…神姫部?そんな部活あったかな…? そんな僕の疑問を尻目に、僕と弁慶の、神姫を取り巻く世界は確実に動き出した。
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『大魔法少女』-1/3 「君は暇人だな」と神様が唐突に吐いた暴言に、すれ違う他人に舌打ちをされるくらいムカついた。 いつのことだったか、バトル観戦していた時に通りがかったウェスペリオーの武装が肩に当たり、文句を言ったら舌打ちされてリアルバトルに発展したことがあったけど、今のムカつき度合いはその時くらいのものだ(ケンカ両成敗で神姫センターを1ヶ月出入り禁止になったけど、高級そうな武装をセイブドマイスターでブチ抜いてやって大満足だった)。 漫画をめくる手を止めず、私のほうを見向きもしないくせに、暴言は確実に私をターゲットにしていた。 「なによ、藪から棒に」 「藪から棒も蛇もあるもんか。僕がこうして暇つぶしに来てやった時は必ず漫画を読むか二度寝してるじゃないか。生きてて楽しいのか」 確かに私は今、漫画を読んでいる。 先週マスターが買ってきた『ストライクウィッチーズ』は私と同じ装備の女の子が世界の命運を賭けた戦争で活躍する傑作で、何度でも読み返したくなる。 特にトモコっていうキャラが私と瓜二つということもあり、『ストライクウィッチーズ』は今、私の中で密かなムーブメントを巻き起こしていた。 そんなことは、どうでもいい。 「なんで漫画読んでるだけで人生を否定されにゃならんの? ねえ?」 「人生じゃないだろ、暇人生だ」 漫画を思いっきり投げつけた。 ニヤニヤしたオールベルンはそれをひらりと躱した。 「あんただって漫画読んでるでしょうが!」 「おいおい僕は神様だぜ。二度寝しようが漫画を読もうが、何したって許されるに決まってるだろ」 積んであった漫画をもう一冊抱えて投げた。 神様も再び躱し、あくまでニヤニヤした表情を崩そうとしない。 「戦場を住処とする武装神姫は一日中トレーニングに明け暮れるもんだと思っていたが、違うのか」 「そんな努力家なんてほんの一握りよ。バトルで緊張しっぱなしなんだから、それ以外は人並み以上に息抜きしたくなるもんなの」 「人並み? 暇人並みの間違いだろ」 「やけに突っかかってくるじゃない。なんなの? 死ぬの? 私はリアルバトルでも全然構わないのよ」 「そんな強気こと言っていいのか。僕のメンテ無しじゃ、トレーニング用のネイキッドにすら苦戦するんだろう」 「んなワケあるかい! 3秒で倒せるわ!」 これは誇張でも何でもない。 そもそもバーチャルトレーニングで使える練習用ネイキッドは無料お試し版しかなく、のっそり動く相手ではセイブドマイスターの調整くらいにしか使えない。 有料版ならネイキッドの武装や強さのレベルを自由に設定できるらしいのだが……そんな贅沢品に手を出せば、代わりに弾薬すら買えなくなってしまって本末転倒だ。 これでも私は、消耗品を補充してくれることについてはマスターに感謝している。 だから有料版をおねだりはしないし、無駄に弾を消費するトレーニングもしない、というのが、私が積極的にトレーニングをしない理由だ。 そんな事情を知ってか知らずか(いや知るはずないんだけど)、神様は「まあネイキッド云々は置いといて」と自分で言ったことを軽く流してしまった。 「君は僕との約束の最中だぞ。人間に昇華するためにはあと六人の神姫を倒さねばならない。しかも次の相手は知らぬ者のない強敵『大魔法少女』だ。漫画を読む時間どころか寝る間すら惜しんで特訓に励むのが普通だろう」 「付け焼刃の特訓をしたってどうにかなる相手じゃないわよ。それにね、あんたはいつも夜中と朝だけココに居座ってるけど、私はやるべきことは日が高い昼間にやる主義なの」 神姫の皆が皆、ゲームのキャラのように部屋を掃除したり、戦いに明け暮れたり、事件を追いかけたり、マスターとキャッキャウフフしていると思うのなら大間違いだ。 身長が15cm程度ってだけで人間と変わらない私達は、いろんなことをやる。 私にしても、この後の用事が今から楽しみでしかたがない。 誰かに惚気るように話したくなったりするのだが、神様は「ふうん」と興味無さそうにつぶやき、漫画から目を離そうとしない。 というかコイツ、さっき私のことを「暇人」と言ったのも、呼吸をするような思いつきで私を貶したかっただけじゃないのか。 自分が一番の暇人のくせに。 ◆――――◆ 職でも探しに行くのか、マスターは朝から出かけていることが多い。 神様もいつものように、正午を過ぎると、読み散らかした漫画を片付けずにどこかへ行ってしまった。 今からの時間は、私の人生――いやさ神姫生が最も潤う時だった。 鏡に映った自分の姿を念入りにチェックしていく。 「髪よーし。服よーし。ストライカーよーし」 最後に頬をパンと叩くことで引き締め、ストライカーに点火した。 小窓まで飛び、鍵を空けて窓を開け放つと、澄んだ空気が部屋に流れ込んできた。 大きな深呼吸で体内の淀んだ空気が浄化される。 「さあ、行きますか!」 邪魔するものの無い、高く、広く、そして青い空へ。 せっかくのフライト日和だし、今日はいつもと違うコースを飛んでみようかしらん。 少しくらい遠回りをして時間がかかるのも、たまには乙というものだ。 ハルと会う約束があるといっても、日時や時間まで決めているわけじゃないんだから。 ◆――――◆ 窓からコッソリ中を覗くと、ハルはいつものように文庫本を広げていた。 首元にポニーテールを垂らし、神姫には大きすぎる文字を追うその姿をずっと見ているだけで日が暮れてしまいそうだ。 なんとか目を離し、毎度の義務のようにワンルームの中を見回しても、やはりあの人は不在だった。 私のマスターとは違って仕事が忙しいあの人は、夜ですら不在なことが多いらしい。 会えるチャンスは多くないのだ。 つい溜息をつきたくなるが、グッとこらえて窓をノックした。 私はハルに会いに来たんだ、落ち込む理由なんて最初からない。 頭を上げたハルが窓の鍵を空けて、中に入れてくれた。 「やあ、今日はいい天気だな」 これである。 この声である。 何度聞いても飽きることのない、凛々しい声を聞くために私はここまで来たのだ。 「いい天気、って言っときながら部屋で本読んでるじゃない」 「今日はあなたが来る予感があったんだ。私を連れ出してくれるんだろう? なら、お楽しみは取っておかなくては」 これである。 この微笑である。 何度見ても飽きることのない、アスファルトに力強く咲く花のような表情を見るために私は生まれてきたのだ。 「えへへ。ねえ、ハ~ル?」 「ん、なんだ」 「ううん、呼んだだけ」 「ははっ、おかしなやつだな、ホノカは」 これである。 このハルである。 世界中の映画館で人々を虜にしてしまう大女優を独り占めしている気分だ。 戦乙女型アルトレーネ。 各神姫メーカーがこぞって軽装備、低価格神姫を発売していたライトアーマーブームをぶった切るように現れた、重装備の高級機種。 私の生みの親、フロントラインが天使・悪魔型の改良を急いだあまり中途半端な装備で世に送り出し、後に『フルアームズ』が完全版商法と揶揄された原因は、これまでの武装神姫の性能を覆す戦乙女型に対抗したことにあったとかそうでないとか。 コストに見合った性能は期待を裏切らず、未だ品薄の状態が続いている。 その一方で、発売当初に戦乙女の幻想を叩き割ったAI「なのです」や、近所の神姫センターでは『第n次戦乙女戦争』が頻繁に勃発するなど、批判が絶えることもない。 そんな天然ボケ娘――アルトレーネの中で唯一、本物の戦乙女となり得たのが、ハルヴァヤだ。 ロット生産されたアルトレーネとは思えない気高さ。 「……カ」 瞳の奥で静かに燃える炎。 「……ノカ」 ハルの炎にこの身を焼き尽くされたい。 ハルにだったら、私は――。 「おい、ホノカ」 「は、はいっ!? なんでしょう」 気がつくとハルが私の顔を覗き込んでいた。 キスしてもいいだろうか。 「どうしたんだ、急に気が抜けてたぞ。調子でも悪いのか」 「う、ううん、なんでもない。そろそろ出かけよっか」 頷いたハルは並べてあったスカートアーマーを装着して、鷲のように大きく広げた。 背中から翼のように広げるのではなく、あくまでスカートアーマーのままで空を飛ぶ――これがハルの、訳ありな飛行形態なのだ。 陸上戦だけでなく空中戦も可能なアルトレーネだが、地を蹴っての戦闘に特化してきたからか、ハルは飛行を大の苦手としていた。 それを聞いた私が、空を飛ぶスペシャリスト(自称)であるこの私が、飛行のコーチを買って出たのだ。 有り体に言えば、ハルと優雅な空中散策――つまりデートをする口実を得たのである。 先に離陸した私を追うようにハルも飛び上がったが、勢い余って私を追い越してしまった。 ハルの翼じゃ私のストライカーのようにはいかないとはいえ、まだまだ自在に空を飛ぶには慣れが必要なようだ。 大回りに旋回して戻ってきたハルは肩から紐で鍵を下げている。 「すまないが、窓を閉めてくれないか。私が近づくとガラスを傷つけてしまいそうなんだ」 窓を閉めて、ハルがリモコンで鍵をかけた。 と、ふとマスターの部屋の窓を開けっ放しだったことを思い出した。 「……ま、いいか」 ◆――――◆ 最初はどう贔屓目に見ても、ハルの飛び方は褒められたものではなかった。 初代アーンヴァルよりも大きな翼はハルの手に余り、風が吹けばそちらに流され、逆方向に吹けば舵を取れずに失速、数メートル下のアスファルトに突進していった。 泳げない子の手を取ってバタ足を練習するイメージでいた私は、飛行訓練がそんなキャッキャウフフしたものでないことを初めて知った。 空中で溺れそうになるハルを抱きしめる幻想など、しょせん幻想でしかなかったのだ。 私のような空を飛ぶために生まれてきた神姫と、そうでない神姫との間には、これほどまでの差があるらしい。 いや、アルトレーネは地上戦がメインの神姫だけど標準で空も飛べる仕様だし、ハルだけが特別なんだろう。 他は優れてるのに、天は二物を与えなかったのか、飛行に関してはちょっと悪い方向に特別、というか。 「嫌ってくれてもいいから、私の言うことをちゃんと受け止めてね――ハル、あなたには飛行の才能が無いわ」 断腸の思いでキッパリと告げると、ハルはがっくりと肩を落としてしまった。 でも誰にだって得意不得意はあって天は二物を与えないから云々、と言おうとしたところで、ハルは急に頭を上げ、それを勢い良く下げた。 「私に才能がないのも、迷惑なのも分かっている。だが頼む、どうしても空を飛びたいんだ」 「や、やめてよ、頭を上げて」 「絶対に空を自由に飛ぶ翼が必要なんだ。ギンとの一戦といい、これ以上あなたに頼ってはいけないのは分かっている。しかし――」 「分かった分かった、分かったから頭上げてってば……理由は聞かないけど、私がコーチを断ったって一人で練習するつもりでしょ? 危ないからやめろって言っても聞く耳もたなさそうね」 済まなさそうにハルは頷いた。 こんな顔をされて、ノーと言える飛鳥なんていない。 「言っとくけど、今のままじゃ地面に激突して粉々になるのが目に見えてるから、練習じゃ容赦しないわよ。最低でもこの『セイブドマイスター』と空中格闘戦でタメを張れるまで続けるからね」 「ああ、恩に着る。これからよろしく頼む」 ぱぁっと明るくなるハルの表情の眩しさが、この時ばかりは痛かった。 城尊公園の望楼を貸し切っての飛行訓練は、苛烈を極めた。 「そっち地面! 地面に向かって飛んでどうするのよっ!?」 「う、上はどっち、うわああああああああああっ!」 追いつけない速さでハルが芝生に急降下していく。 コンクリートよりマシといってもあのスピードじゃ助からない。 もうダメだ! と思ったその時。 ハルは翼を変形させてスカートアーマーに戻した。 身体を半回転させて姿勢を立て直し、空気を踏むようにエアダッシュで制動をかけた。 落下の勢いは完全には殺しきれなかったが、私がハルに追いつく余裕ができる。 手を取り合って、芝生につっ込みはしたが、なんとか不時着に成功した。 「はぁ、はぁ……す、すまない。今のは本気で死を覚悟したよ」 「どうして、ケホッ、うぺっ、土が口の中に……飛行形態の時だけパニックになるのよぉ」 「自分でも、分からないんだ……すまない」 空を飛ぶ才能がなくても、練習すれば最低限、遊覧飛行くらいはできるようになる――そう思っていたのだが、練習を繰り返すうちにそれ以前の根本的な問題が見えてきた。 どうしてだかハルは、スカートを翼に変えるフリューゲルモードになるとパニックに陥ってしまうのだ。 しかも空を飛ぶ時だけならまだしも、実は地に足が付いている時でさえ、翼を広げた瞬間から顔をこわばらせてしまうらしい。 空を飛ぶことを怖がっているわけではない。 さっきのようにスカートを通常形態に戻せば落ち着きを取り戻してくれるのだ。 元々ハルは決して空中戦が不得意というわけではなく、エアダッシュで空戦型を撃墜するところを何度も見ている。 さらにアーマーの使い方だって言うまでもなく自由自在だ。 だというのに。 「背に翼があると、とてつもない不安に襲われるんだ。絞首台のロープが首にかかっているような……変なことを言っているようだが、この例えが一番的確なんだ」 らしくもなくブルッと震えるハルを見れば、それが嘘でないことは明らかだった。 アーマーに不具合でもあるのかと、試しに私がアーマーを借りて装備してみたが、問題なく飛ぶことができた。 「それは生まれつきなの? ハルヴァヤとして目覚めた時からの体質?」 「いや、私はあまり飛行形態になることはなかったが、少なくとも起動してしばらくはこんなことはなかった。だが半年ほど前、何気なくフリューゲルモードになった時から突然のことなんだ、この抗いようのない恐怖が始まったのは」 「心当たりは?」 ハルと頭を振った。 分かりやすいことに、この飛行訓練の一番の近道は、ハルが得体の知れない恐怖心を克服してくれることだ。 でも、得体が知れない以上、どうやって克服すればいいのか見当もつかない。 空に慣れてもらおうと何度か飛んでもらっているけど、その方針は間違いだった。 好き嫌いの多い子供に知恵を絞ってピーマンを食べさせようとか、そんな話じゃない。 ハルの場合は、【飛行形態に対するアレルギー体質】といってもいい。 特訓を重ねれば重ねるだけ、いたずらにハルを苦しめるだけだった。 「このままでは、いつかあなたまで墜落に巻き込んでしまう。……いや、それは言い訳だな。怖いんだ、私は。階段の十三段目が開き、首にかかった縄が絞まる感覚に襲われて……」 恨めしそうにハルはスカートアーマーを見ている。 自分の装備に苦しめられることがどれだけ辛いかは、昔ストライカーに振り回されていた私だからよく分かる。 だからこそ、ハルには絶対、空を飛ぶ自由を知って欲しかった。 「私から言い出しておいて申し訳ないが、この特訓は――」 「特訓は続けるわよ。言ったでしょ、ちゃんと飛べるようになるまで容赦しないって」 言い方が悪かったからか、ハルの私を見る目がハートマン軍曹か何かを見ているような感じに変わった。 「あ、ううん、誤解しないで」怯える戦乙女を落ち着かせようと、ハルの頭を胸に抱いた。 サラサラのポニーテールが指の中に零れた。 どさくさに紛れて髪の香りをかいだ。 イッツ、フローラル。 「敵のいない空で怖がることなんてない。ハルの足を引っ張る恐怖は私が取り除いてあげる」 大袈裟に「恐怖を取り除く」なんて言ってみたけど、解決策はすごくシンプルで、要するにフリューゲルモードにさえならなければいいのだ。 ハルのアーマーはスカートにする時は腰に、翼にするときは背中に装備する。 ではスカートを大きく展開するように翼を作ってみてどうか? これが上手くいった。 腰の位置から翼を広げたハルは怯えることなく、空へと浮上することができた。 試してみた最初の頃は、 「見てくれホノカ! 飛んでいるぞ! なのに全く恐怖心がない!」 恐怖を克服できた代わりに頭のほうに重心が寄っているため、「飛んでいる」というよりは「腰が翼にぶら下がっている」という感じに見えた。 しかしこれでようやく、まともな飛行訓練を始められるようになったのだ。 私の言う【まともな飛行訓練】とは何か? そんなの決まっている。 誰にも邪魔されることのない広い空で、ハルとキャッキャウフフすることだ。 コツさえ掴んでしまえば早いもので、あっという間にハルは正しい姿勢での飛び方を習得してしまった。 まだフル装備で飛ぶまでには至っていないけど、今、私の横にくっついて真っ直ぐ進んでいるように、しっかりと翼で風を切っている。 「なあ、ホノカ」 前を向くばかりでなく、こうして私の方を向いて話しかけてくる余裕も出来た。 そのことが飛行の教官として嬉しくもあり、また寂しくもあった。 「何?」と、できるだけ寂しさを押し隠して応えた。 「今日は少し、遠くへ行ってみないか。いつもは城尊公園まで往復するだけだが、そろそろ行動範囲を広げてみたいんだ。神姫センターくらいまでは飛べるようになりたいんだが」 「神姫センター? ちょっと遠くない?」 「勿論、あなたが危ないと判断すればやめておく。無理して行こうとは思わないんだが、どうだろう」 「遠いのも心配事ではあるんだけど、それ以上に町中って空が狭いから公園より危ないのよね、他にも電線とかカラスとか……ま、その時は私が何とかすればいいか。ハルもいつも以上に警戒すること。いいわね」 「ああ、了解」 高い建物は神姫センターがある駅の周辺にしかないから、しばらくはいつも通りのフライトが続いた。 駅の方へ進むにつれて眼下では、だんだんと人通りが増えていく。 日に焼けて色褪せた貯水タンクを屋上に備えたアパートのように古びた建物の代わりに、一面をガラス張りにしたビルが土地を占めるようになっていく。 私達の真下を電車が通り過ぎた時だった。 「ヘイガールズ、絶好のフライト日和だな。君らも『大魔法少女』を見物に行くのか」 私とハル、その横に並ぶように【クレイドル】が飛んできた。 【クレイドル】が、である。 私の知り合いに【クレイドル】っていう名前の神姫や鳥やスーパーマンがいるわけじゃなくて、寝る時やネットダイブする時に寝転がるあの【揺りかご】だ。 側面に羽がついているとか、ヘリコプターのようなローターがついているとかじゃなく、【クレイドル】そのまんまの形で、まるで魔法の絨毯のように空を飛んでいる。 接続ケーブルを尻尾のようにぶら下げたまま。 絶句するハルがバランスを崩すのは予想できたため、舵を切り損ねる前に手をとってあげた。 どうして私がこんなに冷静でいられるのか? それは、クレイドルの上でくつろいでいる神姫が、ムカつくくらいニヤニヤしてるオールベルンだったからだ。 「あんた何やってんのよ!」 神姫センターまで溜め込んだセリフを吐き出すように、神様に詰め寄った。 ハルは神様が乗ってきたクレイドル(?)をまじまじと見ている。 「なんなのよあのクレイドルは! 意味が分からない! シュールにも程がある! あんたを見つけたとこに私がいて良かったわよ! もしハルが一人であんたと出くわしてたら間違いなく墜落してたわ! 神姫なら神姫らしく普通の武装で飛びなさいよ! なんでいちいち奇をてらうのよ! そんなに楽したいの!? 空でも寝そべりたいの!? だったら始めからよォ、あんたの家から出るんじゃあねェェェェ――――ッ!」 「はっはっは、今の最後のほうの言い方、ちょっとジョジョっぽかったな」 怒りにまかせた右ストレートを、神様は片手でパシンと受け止めた。 「おどかすつもりはなかったんだぜ。ただクレイドルから起き上がるのが面倒でね」 「もしかしてあんた、私達のことをつけて来たの?」 「人聞きの悪いことを言うなよ、偶然さ偶然。僕も君らも同じ場所へ向かっていたんだから、いくら広い空とはいえ偶然出会っても不思議はないだろ?」 「いけしゃあしゃあとよく言うわ。さっきあんた『大魔法少女』って言ったじゃない、何かあるんでしょ。まさか今から戦えってんじゃ……」 「二人は知り合いなのか」 クレイドルを調べ終わったハルが戻ってきて、話を打ち切らざるを得なかった。 私が七人の神姫を倒して願いを叶えること、次の相手が『大魔法少女』であること――他人に知られたら契約が無効になるという神様の言葉を信じるなら、できればハルには神様の存在を隠しておきたかったのに。 そうでなくても、こんな変人の知り合いがいるなんて、知られたくなかった。 せめて神様云々という妄言だけでも隠しておかないと、面倒なことになりそうだ。 「私はハルヴァヤという。いつもホノカには世話になっているんだ。ホノカ、そちらは?」 「あー……こいつはね、えっと」 「神様だ」 「おいコラァッ!」 「隠すことなんてないだろう、君らの上位の存在が堂々としていて何が悪い。ああ、ハルヴァヤ君だったか、いつもこの飛鳥に話を聞いているとも。今後とも贔屓に頼むよ」 「ははっ、なるほど神様か。ならばあのクレイドルも説明がつくな。少し調べたが、この神姫センターで買えるのと同じクレイドルだった。ホノカにはすごい知り合いがいるんだな」 ハルの懐が深くて助かった。 さすがに本物の神様とまでは信じていないんでしょうけど、変なことをやらかす神姫、くらいの認識が丁度いい。 「こんな奴と知り合ったって、何もいいことないわよ」 「そんなことはないさ、すばらしい知人がいることは本当に羨ましい……いや、本当だ。はあ……」 急に遠い目になったハル。 どうしたの、と聞こうとした時だった。 そいつは夕立のような唐突さでやって来た。 「お姉さまぁぁぁぁあああああああっ!!」 甲高い叫びが響いたと同時、ハルが後ろにスッと身を引いた。 ハルがいた場所を、神姫がものすごい勢いですっ飛んでいった。 「ぎゃんっ!?」と床に腹から落ちたのは、真っ赤なチャイナドレスに金の龍をあしらったマリーセレスだった。 神様を見たハルのように、今度は私が面食らう番だった。 ガバッと頭を上げたマリーセレスは、呆れ顔のハルを見るなり目を潤ませた。 「ひっ、ひどいですぅお姉様……せっかく久しぶりにお会いできたのにぃ、どうしてレイを避けるですぅ」 「人が見ている前で、よく恥ずかしげもなくそんな行動ができるな」 「ジャガイモやカボチャの目なんてぇ、気にするほうがおかしいですぅ。お姉様はレイの目だけを気にしてればいいで……スンスン。おかしいですぅ、お姉様以外からお姉様の香りがするですぅ」 自分のことをレイと呼ぶ神姫は突然、鼻をヒクヒクとさせながら辺りの臭いを嗅ぎまわった。 壁、床、神様、神様のクレイドル、そして私まで来たところでピタリと止まった。 目の前で止まった頭のお団子二つを、無性にもぎ取りたくなって手を伸ばした。 するといきなり手首を掴まれ、レイは犬のように私の手を嗅ぎまわった。 「お姉様の香りがするですぅ」 「はぁ?」 「このクソアマッ! ヘドがこびりついた汚ねェ手でお姉様に触れてんじゃあねェェッ!」 噛み付かれそうだったので慌てて手を引っ込めると、レイは踵を返してハルの元へ戻っていった。 いきなり現れてなんなのよコイツ、頭おかしいんじゃないの。 と、レイが自分のドレスの左肩口を掴み、袖を引き千切った。 「どこを汚されましてぇ、お姉様」などと言いつつハルの体を千切った袖で拭き始めたところを見るに、本当に頭がおかしいようだ。 丹念に腹部をこすられるハルは、無表情だった。 しかしその無表情の奥には、竦み上がってしまいそうな何かがあるように見えた。 「レイ、二度は言わない。ホノカに謝罪しろ」 今まで聞いたこともないハルの低い声に、しかしレイは聞く耳をもたなかった。 「はぁ……なんて美しい肢体ですのぉ。頬ずりしたいのにぃ、でもレイが触れるとこの美しさが損なわれる葛藤が――」 パン 軽い音がしてレイの頭が揺れ、私は目を疑った。 強くて優しくて気高いハルに、【ビンタ】という行為があまりに似つかわしくなかったからだ。 「私はな、レイ」手が体を拭いたまま固まるレイの両肩に、ハルが手をかけた。 「あなたを友人だと思っている。そしてホノカも友人で、二人が初対面であっても私達は仲間だ。だから仲間が仲間を侮辱する行為は良くないことだ。分かるかレイ、私は悲しいんだ」 ハルの言い方はまるで、小さな子供に物の善悪を教えているようだった。 マリーセレスがスモール素体ということもあって、よけいに大人と子供に見えてしまう。 「あなたが私に好意を持ってくれていることは嬉しいんだ。しかし――」 「知らんですぅ!」 突然レイの首がグリンとこちらを向き、大粒の涙を流しながら睨んできた。 それも束の間、ハルの手を振り払って、走って逃げてしまった。 「お姉様のあほたれェェェェ――――ッ!!」 という捨て台詞を残して。 それを黙って見届けたハルは、一度で数年は年をとりそうな大きさのため息をついた。 「あの、なんか、ごめんね?」 「ホノカが謝ることなんてない。私こそ、不愉快な思いをさせてしまって申し訳ない」 「でも一応、お友達、なんでしょ? なのにビンタなんて……」 「ああ、そのことか。気にするな」 これまたハルらしくもなく頭をポリポリとかきながら、再び大きなため息ひとつ。 「ぶったのは、これで六回目だ」 苦労人ハルヴァヤの意外な一面をまた見つけたというのに、得した気分にはなれなかった。 ◆――――◆ 「『清水研究室 第三デスク長』のギンや」 変なヤツというのは連鎖して登場したがるものらしく、神様、レイの次に現れたのは、私とハルが力を合わせて撃破した『13km』のギンだった。 この白衣を着た細目のラプティアスを見ることは二度とないだろうと思っていたのに、随分と早い再登場だ。 ただ、今回は私やハルの敵として現れたわけではなく、筐体の壁を挟んだ向こう側にいる。 ギンには、私達が観戦していることなんて知る由もないだろう。 障害物も高低差もないシンプルなステージに現れたギンは、以前戦った時と同様に大きなエネルギーボックスを側に置き、手には火炎放射器のようなビームソード『神殺槍』が握られている。 「ホンマはこないギャラリーがぎょうさんおる中でバトるのは勘弁してほしいとこなんやで。ボクの手の内がバレてしまうからや。それでもあえて出てきたんは自分、『大魔法少女』にボクんとこの研究室に何が何でも入ってもらうためや」 ギンの助手で黒いアーティル、イヅルの姿はどこにも見えない。 単身でバトルに臨むつもりのようだ。 見晴らしの良いステージではイヅルの索敵能力は不要なんだろうけど、このステージでのバトルはギンにとってかなり不本意に違いない。 ステージの端から端まで届くビームソード『神殺槍』はかなり強力だが、それ故に、バトルの相手、さらには多くのマスターや神姫の目に晒してしまっては、今日以降、何らかの専用対策を用意されてしまうはずだ。 これは強い神姫――特に神様の言う【特化型】であれば避けられないハンディキャップだ。 有名すぎるあまり、特性や攻略法が広く知れ渡ってしまう(私のような無名神姫に言わせれば、このハンディキャップはある意味で羨ましい限りだが)。 そしてギンは、戦う相手にさえ武装を見せずにバトルを終わらせるために、ほとんど非戦闘要員のイヅルを自分の【目】の代わりに連れて回るほど、そのことを恐れていた。 にもかかわらず、こうして観衆の視線の中に飛び込んできた。 この一戦のために――『大魔法少女』と戦うためだけに。 「でも自分をメンバーに引き込めるんやったら、ボクの秘密なんて安いもんや。せやから約束はキッチリ守ってもらうで、『大魔法少女』。ボクが勝ったその瞬間から、おたくは清水研究室第三デスクの一員や」 ギンがツイと指さした先、シュメッターリングは僅かも怯まず、むしろ全身に勇気が満ち溢れているようだった。 「分かってる。約束は守る」 「だめだよアリベ! これじゃ相手の思う壺だよ!」 肩に乗せた使い魔(マスコットマシン)をあやすように頭を撫でたアリベは、その時だけは表情を優しく緩め、まるで生まれたての赤ん坊を抱き上げる聖母のようだった。 身に纏う武装は、元々どう見ても武装とは呼べなかったシュメッターリングのコスチュームを、一昔前の小さな子供(+大きなお友達)向けアニメ調にアレンジされている。 短めのステッキで彼女の代名詞とも呼べる『インペリアルハート』は、見た目こそ星とハートのキラキラを散りばめた玩具だが、その中に秘められた力はこの神姫センターで販売されているどの武器をも軽く凌駕してしまう。 さらに使い魔の『ゲットセット』と合わせて『大魔法少女アリベ』が完成する。 いつ見ても一級の実力者とは思えない軽装備。 ちなみにあの使い魔、実はしゃべることができず、会話はすべてアリベの腹話術であるともっぱらの噂だ。 ちゃんとAIが入っているのかも不明の使い魔を落ち着かせ、再び顔を上げたアリベの瞳は、さっきまでよりもっと強く光り輝いていた。 「あなたが勝ったら、私はあなたの手下になります。だから私が勝ったら――」 「『もう二度とそのツラ見せるな』言うんやろ、嫌われモンは寂しいでホンマ」 「私が勝ったら、もうこの世界の人たちを苦しめないと約束してっ!」 「は?」と呆気にとられるギンを一人置き去りにして、『大魔法少女』の独壇場が始まった。 このバトルというステージを見るために詰め掛けたギャラリーが湧き上がり、熱狂的なファンクラブが声を揃えてアリベの名前を叫んだ。 アリベの背後に後光のような淡い緑色の線が走り、それが互いに絡み合って大きな円を描いていく。 複雑な模様はやがて歯車を何重にも組み合わせたような魔方陣となり、アリベのつま先を地から離した。 「この世界は綺麗なものばかりじゃない……つらいこと、苦しいこと、悲しいことがいっぱいある。立ち向かう強さがなくて、負けてしまうこともあるかもしれない……だけど!」 ブン、と『インペリアルハート』を振ることで魔方陣の輝きがさらに増し、光の中心にいるアリベの姿を上へ押し上げた。 予めアリベの情報収集くらいしていたであろうギンだが、実際に正面に立つのでは迫力が違うのか、口をポカンと開いて唖然としている。 ただ呆れているだけかもしれない。 「諦めずに戦い続けた先には必ず歩むべき道が待っているの! 晴れることのない雨なんてない! 明けることのない夜なんてない! 光が届かない闇なんてないっ!」 天使に手を引かれるようにゆっくりと上昇していく姿を近くで見ようと、集まった神姫やオーナー達が筐体のアリベ側へ押し寄せていく。 私とハル、神様は逆に空いているほう、ギンの側へと回った。 「だからみんな戦わなくちゃいけないの! 勇気を振り絞って、力の限りを尽くして戦わなくちゃいけない! でも全力で戦っても負けてしまいそうになったら――その人の手を取るために私はいるっ!」 すし詰めになった観客が「「「アリベー!!」」」と声を揃えて叫び、熱狂の渦を作り出す。 特に神姫にとってアリベは、正義を圧倒的な強さで証明してくれる偶像で、崇拝すべきアイドルと化している。 遠くから冷めた目で見ている私やハルには信じられないことだが、『大魔法少女』のオンステージの度に涙を流しながら彼女の名を声がかれるまで叫び続ける神姫までいるくらいだ。 「武装神姫にとって、強さこそが全てだ」 魔方陣の輝きに、ハルは目を細めた。 「その強さを正義の名の下で執行する――執行できる彼女を崇拝する気持ちは理解できるな」 そう言いつつも、バトル前の長い前置きはあまり好きではない様子がなんとも即物的なハルらしい。 華やかなステージの対岸ですっかり悪役かつ引き立て役になってしまった白衣のラプティアスは、『大魔法少女』を相手取れば必ずこうなってしまうと分かっていたのか、ただじっとバトルの開始を待つだけだった。 「ね。ギンとアリベ、どっちが勝つと思う?」 そう聞くと、ハルは難しそうに顎に手を当てた。 「ギンの神殺槍は知っての通りだからな。どんな相手だろうと優位は崩れない。さらにこうして観衆の下に出てきたのは恐らく初めてのはずだから、ギンのことを何も知らないアリベがあっけなく斬られて終わるかもしれない……しかし」 「しかし?」 「アリベの正義にあてられたわけではないが、『大魔法少女』が負ける姿が想像できないんだ」 私もハルと同意見だ。 たぶん、この神姫センターを利用する神姫のほとんども同じくらいの認識でいるだろう。 自分達の信じる正義の使者が負けるはずがない、と。 「ここまでナメられて黙っとくのも一苦労やけど、まあええわ。一瞬でぶった斬って、その自慢っ鼻をへし折ったろうやないか」 神殺槍を構えたギンはその言葉通り、速攻で勝負を決めるつもりだ。 ようやくアリベの長い前置きが終わり、バトルの始まりを告げるコールが響いた。 この時の私には知る由もないが、ここからギンの所属する『清水研究室』の噛ませ犬としての役割が始まるのだった。 『大魔法少女』-2/3 トップへ
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武装神姫達のソード・ワールド2.0【第1-2話】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm17944941 ヴァル「あーるーはれたー、ひーるーさがりー、いーちーばーへ…」 「ドナドナ」の歌詞の冒頭。反戦歌という説もあり、少なくとも明るい歌ではない。
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とにかく、新作を出してほしいな・・・ -- (名無しさん) 2015-07-08 00 06 54 コンマイは全てのユーザーを敵に回した以上、次回作を望むのは無理と見るべし。 -- (名無しさん) 2015-07-08 17 41 41 全てのユーザーってなんかあったっけ? -- (名無しさん) 2015-10-12 00 03 50 武装神姫のゲームによるブーム復活、 その先駆けとして、バトマス最新作が出たら、買う。 -- (名無しさん) 2016-01-26 17 02 52 仮にリメイク版が出るなら最初から黒子を使わせてほしい…あんばるが最初からいるのに対がF2後って… -- (名無しさん) 2016-03-25 16 08 41
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戻る トップへ #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (X01HappyNewYear.jpg) 「新年、明けましておめでとう。宗太、パーシ」 「同じく、明けましておめでとう。お二人」 糞寒い冬の朝。俺はとある駅の前で加奈美とシルフィから新年の挨拶を受けていた。 「あけおめぇ、二人ともぉ。その振袖、よぉく似合ってるわぁ」 俺の胸ポケットでパーシが言った。確かにパーシの言う通り、二人は俗に言う振袖姿だ。 加奈美はピンク色の花柄振袖。髪も何時もみたいにストレートじゃなくて、ちゃんと結わえてある。化粧でもしているのか、振袖のせいか何時もと違って大人ぽく見えてしまう。 シルフィも加奈美とお揃いの振袖を着て、加奈美の肩に座っている。しかも髪の毛は何時ものツインテールじゃなくて、簪を付けてポニーテールぽくしてる。その凛々しい表情は振袖の魅力を何倍にも引き出している。 今がこんなんじゃなければ、加奈美の姿は目の保養になったろうしこの初詣もデート気分で楽しめただろう。 「バカ宗太ぁ、綺麗の一言でも言ったらどうよぉ?」 「……加奈美」 「なに?」 「今日が何日か言ってみろ」 「一月四日よ」 加奈美はにこにこしながら言った。まるで物事の正否なんて関係無いとでも言うように。 「初詣っつーのはよ、普通元旦辺りにいかねぇか?」 「私も主にそう進言したのだが……」 と、シルフィは言っているけど顔は満更でも無さそう。てゆーかすげー嬉しそうだから説得力も何も無い。振袖着れたのがそんなに嬉しいんか。 「別にぃ初詣にいつ行こうと自由じゃなぁい?」 「うっせー阿呆。別に初詣自体に文句はねーよ」 「では宗太殿、何が不満なのだ?」 「……とりあえず、眠ぃ」 何を隠そう、俺はついさっきまでバイトをやっていた。しかも徹夜で。 昨日の夕方六時から今朝六時までずっと働き詰めだった。夜勤に行くことは加奈美にメールで言って置いた。今朝もバイトが終わったときに加奈美にはこれから寝るから家来ても無駄だって、そう連絡した。なのに。 「加奈美、お前はあのメール見てなんでこうなるんだ」 「押すなよ、絶対押すなよ! みたいな?」 加奈美の一世代古いネタに頭痛がしてくるけど、今はもっと頭痛の原因がある。 「……それと後一つ」 「なにかしら?」 「何で秋葉原なんだよ」 「この辺りはフツーの町だな……」 俺と加奈美とシルフィと阿呆は、秋葉原のメインストリートから二つ三つ奥に行った所謂裏路地を歩いていた。 「電気街とは月と鼈よねぇ」 「いや……電気街が異常過ぎるのではないか?」 「そうかしら? 私はああいうの好きよ、活気があって」 「……」 「馬鹿宗太ぁ、なんか言いたそうねぇ?」 なんつーか。あれだ。 俺も少しくらいまともな恰好して来た方が良かったんかねぇ。 振袖の加奈美とシルフィに対して俺はジーパンとダウンジャケットだし、パーシに至っては素体そのままだ。 そんな俺達と加奈美達が並んで歩いているのは端から見たら結構奇妙な光景じゃねーのかなぁ。 「なぁ、加奈美」 「なに、宗太?」 「……どこの神社行くんだ?」 「あら、言って無かったかしら?」 「……主よ、ただ神社に行くとしか言っていなかったぞ」 「そうだったかしら?」 「加奈美ったらぁ、いつになくぽややんねぇ」 「着慣れない物着てるからかしらね」 「本当にそれだけぇ?」 「さぁ、どうかしら?」 「……楽しんでるところわりーいんだが、俺の話覚えてるか」 「なんだったけぇ」 「なんだったかしら?」 相変わらず、マイペースと言うか何て言うか、自由な連中だよ。 そんな俺に残された最後の良心はシルフィだけだ。 「シルフィ、どこの神社かわかるか……」 「……」 「シルフィ?」 「……」 やべぇ、返事が無ぇ。ていうかさっきから反応が少し可笑しいと思ってたら、振袖の袖の部分を嬉しそうに眺めてみたり、帯を触ってみたり、簪いじってみたりしてる。俺の言葉には反応すらしない程に嬉しいんかい。 「あ、加奈美ぃ。あの神社じゃなぁい?」 「あら本当」 二人の視線の先に目を向ければ、そこにはこじんまりとした神社が見えた。 まだ少し距離があるから細かな所は解らないけど、公園みたいなのもある。 「喋ってる内に着いちゃったわねぇ……シルフィ、着いたわよぉ」 「……ああ、了解だ……」 シルフィはそう言ってるけど、視線は神社を見ていない。てゆーか俺の声は聞こえなくてもパーシの声は聞こえるんかい。 「で、なんであの神社選んだんだ」 すこーしブルーな気持ちになりながら、俺は加奈美に聞いた。 「あら、言って無かったかしら?」 「……加奈美、その台詞二回目だぞ」 「そうだったかしら?」 ……ダメだ。今日の加奈美はいつも以上にペースを乱される。振袖ってのは女をこうも変えてしまうのか。 「おい阿呆」 「なによ馬鹿」 「なんであの神社なんだよ」 「ふぅ……まったく馬鹿は人に物聞く態度も分からないのねぇ」 何時もなら導火線に火が付く所だが、今日は眠すぎてそんな気も起らねぇ。 「まぁ、今日は正月明けって事も踏まえてぇ許してあげるわぁ。一度しか言わないからよぉく聞きなさいよぉ?」 「やっぱ良いわ」 「なんでよぉ」 「着いちまったし」 加奈美とパーシに話を振ってる間に、俺達は神社の鳥居の下に着いていた。 とりあえず、ぐるりと周囲を見渡してみる。 まぁとりあえず頭上にある鳥居。正面にある参道の先に拝殿と賽銭箱。参道の脇にある手水舎。所々にあるでっかい木。公園みたいなのもあった。 普段から神社とかあんま来ない俺からしたら、何と言うか、なんで加奈美がここに来たがるか分からない。そんな普通な神社だと思う。 ただ、この時期なのに落ち葉とかはあんま落ちてないし、ゴミみたのも見当たらない。規模でいえば小さな神社なんだろうけど、その分なのか、手が行き届いてるような気がする。 どっかのでっかい神社みたいに入るだけで疲れそうな神社とは違う、安心できる。よくわかんねぇけど、そんな風に俺は感じた。 「馬鹿宗太ぁ、加奈美達先に行ってるわよぉ!」 「おう」 気付けば加奈美達は手水舎で手をすすいでいた。 石で出来た水盤には見るからに冷たそうな水が溜まっていて、それで手を洗ってる加奈美を見ているだけで寒くなる。 「マメだな」 「あら、これは参拝者のマナーよ。ちゃんと宗太もやらなきゃダメよ?」 「……マジで?」 「マジで」 加奈美はそう言うと、水を手で掬って口に入れた。 それは俺に同じ事をやれと言外に要求しているのが良く分かる。 仕方なく柄杓で水を掬って、左手にかけた。 「……つめてぇ」 「泣き言言わなぁい」 一月の水は阿呆みたいに冷たい。まるで針で刺されてるみたいな痛みを感じる。眠気が一気に覚めるくらいに。 だらだらやっても辛いだけだから一気に右手に水掛けて、口もすすいだ。 「あー……つめてぇ」 「はい、ハンカチ」 ハンカチで手を拭いたところで、冷たさは変わらない。俺はハンカチを加奈美に返してポケットに手を突っ込んだ。 「遅いわよぉ、馬鹿」 「うるせー」 パーシの小言に相槌を打ちつつ、参道に戻って拝殿へと向かう。 加奈美は一歩遅れて付いて来ている。 「主よ、人が少ないな……」 意識が振袖から離れたのか、シルフィがようやく自発的に言葉を発した。 「三が日は過ぎたからな。今更初詣来るのは俺達くらいだろ」 拝殿までの道のりはそんなに無い。一言二言交わせば直ぐに付いてしまう。現に俺は賽銭箱の前に居る。 「宗太ぁ、お金ぇ」 「ほらよ」 悴む手を奮い立たせて財布から一円玉を取り出して、パーシに渡した。 「……馬鹿宗太ぁ」 凄まじい敵意を感じるが、そんなもんスルーだ。俺も同じく一円玉を取り出して賽銭箱へと投げ入れる。 目を瞑って手を合わせて。とりあえず、家内安全辺りを祈っておくか。それとも学業成就か。 色々考えていると、ちゃりんちゃりんちゃりんと賽銭を投げ入れる音が三連続で鳴った。 それに続いて、ぱんぱんと手を二回叩く音。 瞑っていた目を開ければ、瞳を閉じて何か真剣に祈っている加奈美の姿が見えた。 俺はとりあえず、がらんがらんと鈴を鳴らした。 「宗太ぁ、私の分も鈴鳴らしなさいよぉ」 阿呆に言われるまま俺は連続でがらんがらんと鈴を鳴らしてしまった。 「……何お祈りしたんだ?」 とりあえず、何と無く手持無沙汰だったから、パーシに話を振ってみた。 「だぁれがあんたなんかに教えるのよぉ」 まぁ、そういう返事は想定の範囲内だ。はなからまともな返事が返ってくるとは思っていない。ただの暇つぶしだ。だから阿呆に何言われようと全く気にならねぇ。 その時、丁度がらんがらん、がらんがらんと鈴が連続で鳴った。言わずもがな、加奈美とシルフィのが終わった音だ。 「ねぇ加奈美、シルフィ。何お祈りしたのぉ?」 音が鳴り終わるやいなや、パーシは開口一番そう言った。 「私は……とりあえず家内安全よ」 ウソだな。あの間は加奈美がウソつくときの癖だ。 本当は何を神頼みしたかは知らねーけど、碌でも無い事は確かだろう。 「シルフィはぁ?」 「私は皆の健康だ」 たぶん、シルフィは本当だろう。 なんとなくだけど、そんな気がする。 「加奈美、用はすんだか?」 神社に来てやる事はもう荒方やってしまった。加奈美が何故この神社に来たがったかは俺には解らない。 確かにここは良い所だが、メールで俺を叩き起す必要は無かったんじゃないか。 「ふふ、お楽しみはこれからよ、宗太?」 と、加奈美は不敵に笑うと社務所の方に歩いて行った。 阿呆のパーシを見たら何故かしてやったりな顔されて、シルフィを見たらまだ振袖を嬉しそうに眺めてた。 そんな俺に出来る事は冷えた両手を温めながら加奈美に付いて行く事だけだ。 「すいませーん」 社務所についた加奈美は少し大きな声でそう言った。社務所にはどこの神社にもあるようにお守りやら破魔矢やらが置いてある。ただ、人だけが居なかった。 そんな事をぼんやりと考えていると、少し遠くから声がした。 「はい、唯今参ります!」 人の声にしたら少し奇妙に感じる声。なんというか、発信源が遠いような、近いような。そんな感じだ。 加奈美もパーシも俺の事を面白そうに見るだけで、何にも言おうとしないし。 「お待たせしました」 次の瞬間、かなり近い場所から声がした。 その音源を探る様に辺りを見回してみても、見る限り人はいない。 「宗太、そこよ」 加奈美の少し下向きな視線を追えば、そこには立派な巫女さんが居た。 白子袖に緋袴姿。どっからどう見ても完璧に巫女。ただ一つ、その姿形が良く見慣れた存在である以外は。 「へぇ……神姫の巫女さんか」 「はい、結と申します。この神社の巫女を任されております」 俺は思わず嘆息した。その巫女さん神姫―――結はハウリンタイプの武装神姫だ。 それが巫女装束に身を包んで神社の巫女をやっているのだ。 俺は純粋にハウリンと巫女との融和性に驚くしかなかった。 「結さん。御神籤を引きたいのだけれど」 「はい、少々お待ち下さい」 結の受け応え、そして動作はどうみても巫女そのものだ。 彼女がこの神社の巫女を任されているのは、本当の意味で任されているのだろう。 ただ、武装神姫の結が人間用の御神籤箱を持ち出した時は少し危なっかしいと思ったりした。 「どうぞ」 「ありがとう」 加奈美は御神籤箱を受け取ると、からからと振った。 「私は……3番。はい、宗太」 「おう」 加奈美に御神籤箱を渡されて分かったが、この御神籤箱はかなり軽い。たぶん、結のオーナー辺りが彼女用に作ったのだろう。 片手で軽く御神籤箱を振り、出てきた棒の番号を読み上げた。 「俺は1番だ」 御神籤箱をパーシに渡してから、結から御神籤を貰った。 「はい、こちらです」 小さく折りたたまれた御神籤をさっそく開こうとしたら。 「宗太ぁ、皆で一気に開いた方が面白いでしょぉ……私は16番ねぇ」 パーシから御神籤箱をひったくり、シルフィに渡す。シルフィもそろそろ平常心に戻っているらしく、普通に御神籤箱を受け取ってくれた。 「……私は4番だ」 これで、全員に御神籤が行き渡った事になる。 「んじゃ、早速」 俺は小さく折りたたまれた御神籤を開いた。 開いて、かなりブルーになった。 「あら、吉だったわ」 「主……小吉だ……」 「ラッキぃ、私は大吉よぉ」 お前らは良いよなぁ……。 「宗太のはぁ……と……凶?」 「あら」 パーシの言うように、俺の御神籤にはでっかく凶の字が書かれていた。 御神籤で一年の全てが決まるとは言わないが、一年の初めにこんなんだとどうしてもテンションがブルーになる。 「御神籤というものは運勢よりも、書かれている内容をしっかりと心に留めて、よりよい運勢になっていくように努力していいくものなのですよ」 結が口を開いた。 それは俺を慰めているのとは違う、励ましているのとも違う、何とも不思議な声音だった。 「内容、ねぇ……」 禍々しい凶の字に向けていた意識を、下の方に向けて見た。 悦事:なし 住居:移らぬ方よし 旅行:盗難に遭うから止めよ 儲事:先得するも後大損す 待人:来らず 失物:でがたし 試験:落ちてもくよくよするな 病気:死に至る病である 事業:友人の裏切りに注意 産児:大きな苦しみを伴う 「……宗太ぁ、良い事あるわよぉ」 「宗太殿……その……」 気を遣うな、武装神姫。 あれから俺はお守りを買い漁り、神社を後にした。 俺の心は清々しい青空のようにブルーだった。 「馬鹿宗太ぁ、まだ引き摺ってんのぉ?」 「パーシ、そっとしておいた方が良いのではないか……?」 シルフィは自分も小吉だったせいか、俺に友好的だ。だけど、その心遣いもちょっとキツイ。 「……加奈美、ここは何だ」 「ALChemistよ」 俺はこんな気分を払拭する為にも早く帰って寝たかった。 それなのに加奈美は俺を引き摺り回し、秋葉原の中心部に程近い無線会館とやらの地下二階に連れてきやがった。 看板やらを見る限り、一応武装神姫関係のショップのようだが。 「……俺は帰る」 「なんでよぉ、馬鹿宗太ぁ」 俺はこのショップからある気配を感じていた。 いや、正しくはこのショップと加奈美とシルフィとパーシからだ。 それは男にとって理解出来ない気配であり、出来れば帰りたくなる気配だ。 「い・い・か・ら、入りましょ?」 いつの間にか背後に回っていた加奈美に背中を押され、俺はALChemistの店内へと足を踏み入れてしまった。 その先は、一見喫茶店と見間違うような空間だった。 「あ、いらっしゃいませですの~」 俺の真正面、棚に並ぶ商品を整理していたのだろうか店員らしき人物が立っていた。 俺は思わずその姿に見とれていた。 蜂蜜色、そう形容するしかない三つ編みにされた綺麗で長い髪の毛。 その瞳は吸い込まれるような深い蒼色。 アクセサリーを身に付け、エプロンを身につけた彼女はとても俺と同じ人間とは思えないほどに美しかった。 それでいて彼女は絶世の美女、と言うよりも美少女と言った方がしっくりくる。 何分でも、何時間でも見惚れていたくなるような、そんな人だ。 「馬鹿宗太ぁ、なぁに鼻の下伸ばしてんのよぉ」 今日初めて秋葉原に来て良かったと思っていた至福の時をブチ壊したのは俺の耳を思いっきり引っ張った阿呆のパーシだった。 「? ゆっくり見て行ってくださいですの」 そう微笑みかけられて、俺は思わず目を逸らしてしまった。俺は餓鬼か。 「ふん。加奈美、こぉんな馬鹿ほっときましょぉ」 「そうね、これからは女の子の時間だものね」 「そぉ言う事だから宗太ぁ、お財布よろしくねぇ」 「……おい、どういうこった」 「だからぁ、私たへのお年玉よぉ」 「心配しないで、宗太。ちゃんと宗太が帰れる程度には残しておいて上げるから」 「あ、主よ。それは幾らなんでも……」 「心配する事無いわぁ、シルフィ。あの馬鹿は年末年始で相当稼いでるから10万20万は全然平気よぉ」 「俺の意見は無視か」 「いや、だがしかし……」 「大丈夫よシルフィ。宗太は優しいからきっと買ってくれるわ」 加奈美にそんな顔で見られると、断るわけにはいかねぇよ。 だけど、ただやられるだけじゃ腑に落ちない。 「……良いけどよ、30分以内に」 「馬鹿も正月は気前が良いわねぇ!」 パーシは俺の背中を蹴って加奈美の肩に飛び付いた。 俺が言い終わるよりも早く、3人は買い物を始めやがった。 もうこうなったら俺にはどうしようもない。30分時間が浪費されるのを待つだけだ。 「あら、これ可愛いわね」 「いいじゃなぁい、シルフィに似合いそうよぉ」 「い、いや。私にはとても……」 「そんなことないですの。きっとお似合いになるのですの♪」 「て、店員さん!?」 「でも貴女にだったらこっちも似合うと思いますの」 「本当、こっちの方が似合うわね」 「さっすがぁ、店員さんねぇ」 ……女は怖い。 怖い、っていうか凄い。 気持はわからないでもないけど、俺は買い物にここまで夢中になれない。 30分。たぶんあいつらにとっては短すぎるんだろうなぁ。 まぁ俺は店員さんを眺めているだけで良いんだけど。 「何か探しものか、客人よ」 美少女店員さんを眺めてたら、声がかかった。 雰囲気的びは店員さんだが、周囲を見渡しても小さな女の子しかいなかった。 「誰が小さな女の子かッ!」 黒髪を肩辺りで揃えた、小柄で非常に可愛らしい女の子は、その可愛らしさとは裏腹な言動と鋭い蹴りを俺に浴びせやがった。 「っ―――痛ぇ!」 俺の脛を正確に狙い澄まして放たれた蹴りは、滅茶苦茶痛い。 うずくまって脛を押さえていると、彼女が再び口を開いた。 「人の妹をいかがわしい目で見るかと思えば言う事はそれかッ!」 妹? 誰が? ここにいるのは俺と加奈美とシルフィとパーシと店員さんとこの幼女だけなのに? 「誰が幼女か、このたわけッ!」 うずくまっている俺に対し振るわれる右足。 顔面に当たり寸前に腕でガードしたけど痛い痛い。 この子、なんか格闘技でも習ってんのか? 「……少しは反省したか?」 軽く腕組みしながら俺を睨みつけてくるよう……じゃない、この子。 てか俺思考読まれてね? とりあえずうずくまったまんまだとヤバいから立ち上がる。 「OK、OK。お互い落ち着こう……」 両手を挙げてこちらに敵意と悪意が無い事をアピール。 だけど、彼女は鋭い目つきで俺を睨んだまんまだ。 大人しくしてれば人形みたいに可愛らしいんだがなぁ。 「ふん……最初に言っておく、私がこのALChemistの店長、槇野 晶だ」 店長? こんなちっさくて可愛らしい女の子が? 「っと待て、待って下さい、蹴らないで下さい……じゃあ、妹って言うのは?」 「無論、あそこに居る葵の事だ」 「……葵さん、ねぇ」 あの店員さん、葵さんっていうのか。 良い名前だなぁ……とか思ってたらまた危うく蹴りを入れられそうになった。 「うぉっ、あぶね!」 「貴様……また良からぬ事を考えておったな?」 やべぇ、この子。じゃねぇや晶さんは読心術でも会得してんのかよ。 迂闊な事考えられねぇじゃねぇか。 ―――そんなこんなで1時間後、俺は無事にレジで代金を支払っていた。 「毎度ありがとうございますの♪」 レシートを受け取ればそこには目を覆いたくなるような惨劇が。 「……帰るぞ」 「えぇ、帰って早速ファッションショーね。宗太のお家で」 「それが良いわぁ、加奈美。この馬鹿の部屋、今は大掃除直後だから珍しくキレイなのよぉ」 「二人とも、そろそろ宗太殿が怒られるぞ……」 何故か俺が荷物を持ちながら、店を後にした。 「またどうぞですの~」 最後に一度、葵さんの姿を目に焼きつけようと思ったけど、晶さんに蹴られそうだったから諦めたのは俺の心の中に締まっておこう。 トップへ 進む -
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暑くて、厚くて、熱い。 容赦なく降り注ぐ砂漠の太陽は、容赦なく廃熱を阻害し、揺らめく分厚い蜃気楼のせいで体感500m先はわからない。そのうえデザートイエローのシートで覆われた『彼女』の装甲板は際限なく過熱され今や、手袋無しで触ることすら億劫になろうかというところである。 「あつぃ~です」 シートの下の装甲版のさらに下、彼女はけだるげに愛機に腰掛けていた。 周囲には遥かの昔に放棄されたのであろう廃ビル群が立ち並び大きな日陰も目立つのだが彼女はあえてその場所を選んだのだ。 周囲に遮蔽物がなく、前方に軽くビルの残骸や、土を盛るだけで塹壕となり、また……背後から急襲される可能性の少ないバトルフィールドの端。 そこはまさに格好のアンブッシュポイント、いや、むしろ絶好の砲兵陣地といえるだろう。 彼女は砲台型フォートフラッグのスチール・ブリゲード、愛称は「キャロル」。武装神姫である。 通称『一人旅団のキャロル』 とはいえ、これは彼女が自分に付けられた名前の意味を理解した際に皮肉を込めて名乗っているだけで、知名度もなにもない。 キャロルという愛称も彼女がゴネて付けさせたもので、英語圏の苗字であるキャロルよりはむしろ米陸軍第18砲兵団の本拠地であるところのノースカロライナの意味だと彼女が理解したのもつい最近。 「いくらフォートブラックだっていっても……ふんっ! いいんですから、ジョーとかアーノルドとかつけられなかっただけでも良しとしてあげ……あぁっ、もうっ!あのミリオタぁっ! 少なくともジェーンとかいろいろあったでしょう!? もうっもうっ! リセットせずに改名できたらぁっ!!」 ガンッと力任せにレストパットの装甲版を殴りつけ、殴りつけた拳の痛みに悶絶。なんだかよけいになさけない気分になったのか、大きくため息をついた。 そのとき、ヘルメットの出力部分から彼女の聞き知った声が流れた。 「はいはーい、こちらブラボーワン、感度は良好ですよ?」 その直後、キャロルはヘルメットの上から片耳を押さえて顔をしかめた。 「了解しました! わかってます! 小さな声で送信音量を限界まで上げて怒るのやめてください!」 いいつつ左手で流れるようにコンソールを弄り、愛機の獲物を「目標」に定める。 「試射時との気象条件の変化なしっと、射角よし、準備よし! デンジャークロースですよ、注意してください!」 細い指がポンっ、と踊るようにコンソールを弾いた次の瞬間、バンッと今までの停滞を打ち払うかのような爆音が響き、砲身が一瞬大きく後退する。 「発射しました、弾着まで2、1、弾着……今。 砲撃評価願います」 遠くの方から遠雷のように爆発音が響き、続けてブゥーンという相棒の発生させている機械音がここからでも聞こえる。 「Rog、マップグリッド、ヤンキー-ワン-シックス-ゼロ ホテル-ツー-セブン-ファイブ エックスレイ」 再びコンソールの上を指が踊り、にやりと笑う。 「ふふっ、デルタロメオエネミー(ディアエネミー)です」 バンッ……バンッ……バンッ 続けて三発、続く遠雷に先ほどのブゥーンという機械音と何かが炸裂する音。 「フィニッシュパターンですねー、敵さんも気の毒です。アリスちゃんトリガーハッピーですから 動けなくなってもひとマガジン撃ちつくすんですよね~ っと、こちらはどうでしょう? これだけ派手にやれば……」 そう呟くとキャロルはヘルメットにマウントされたヘッドマウントディスプレイを下す。 「ビンゴですっ! ふふんっ、バカがかかりましたね?」 相棒がオーバーキル気味の制圧射撃を加えている一方、敵方の相棒が彼女を探している。 もっともさっきから派手に発砲音を響かせているので、よほどのトンマでもない限り彼女の居場所は見つけるだろう。 即席のカモフラージュでは突き出した……その黒光りする砲身はフォートブラックの純正品ではない、海外メーカー製というか、彼女のマスターがアメリカのユナイテッド・ディフェンスとの知り合い(どうせ海外モノのFPS友達に違いない)から譲り受けたという1.55mm榴弾砲。 流石に榴弾砲すべてをカモフラージュシートで覆うわけには行かないので、どうしても砲身が目立つのだ。 そんな、図体だけ大きく、更に自ら周りを埋めてしまっている為身動きさえ取れない一見完全に無防備な砲兵陣地であったが……接近戦で一気に片をつけようとしていたのであろうストラーフ型の神姫が、陣地までたどり着くことはなかった。 「随伴歩兵もいない砲兵陣地付近が無防備なわけないじゃないですか。 州兵だってもう少し警戒してますよ?」 キャロルは右手に握ったスイッチ。 すなわち外周部に設置された神姫用の指向性爆弾の起爆スイッチを投げ捨て、やれやれと肩をすくめて見せた。 ≪WIN≫ TOP